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神尾永遠は食事の時間があまり好きではない。
そのことに彼女が気づいたのは、割と最近だけれど。
夕食はリビングで家族揃って、が神尾家のルール。
父が帰ってくる時間に合わせて母はごはんをつくる。
当たり前で、端から見ればとても、恵まれた家庭だと思う。
永遠自身もそう思っていた。思おうとしていた。

「今日は、どうだった」

父の言葉。いつもこの言葉から夕食ははじまる。
その日あったことを答える。淡々と。でもあくまで笑顔で。

「そうだなぁ…あ、今日はね、先生が難しいって言ってた問題を一番に解いてたの。すごく褒められた!…あ、お母さんこれ美味しいね!」
「ふふ、ありがとう。頑張って作ったのよ」

楽しそうに話す。永遠にとってそれは当たり前のことだった。
母は笑ってくれる。たぶん、素敵な家庭だ。

「そうか、良かったな。これからもしっかり頑張りなさい」

父も満足そうだ。安心したような、でも少し難しい表情をしている。
永遠は少し不安になる。まだ、足りないだろうかと。
何か付け足すことはないかと思案する。父を喜ばせるような何か。

そこでふと永遠は思い出した。今日はとても、いいことがあったのだと。
きらきらするような感情、普段あまり感じない楽しさ、幸せな気持ち。
それをただ、伝えようと思った。
父もきっと喜んでくれるだろうと思ったから。

「そういえば、今日美術の授業で絵を描いて。すごく楽しくてびっくりした!
先生も素質があるって言ってくれて。本気かどうか分からないけど、そういう学校に行ってみたらどうかって。それもいいなぁって…」


「何をふざけたこと言ってるんだ!!!」


時間が、止まった気がした。何が起きたのか理解が追いつかなかった。
聞いたこともない怒声、父の激昂した表情。
それは永遠にとって初めて見る父の姿だった。
すぐに我に帰ったのか「すまん、言いすぎた」といいながら座りなおした父を見つめながら、けれど永遠は気付いてしまった。
たぶんこの夕食は、ずっとまえから”間違って”いたのだと。
父を安心させる話をすして、母にいつもありがとうと言い、笑いながら食事をする。
永遠の気持ちはどこにも存在していなかった。
いつからこうだったのかうまく思い出せなかった。昔はもっと楽しかった気もするし、ずっとこうだった気もする。
美味しいね、と言い続けてきた夕食は、なにがどう美味しかったのだろう。
昨日母が作ってくれて、嬉しそうに食べたあれはなんだっただろうか。
ぐるぐると脳内中を巡ってみても、永遠はそれを思い出すことはできなかった。

そのかわり永遠の口から出たことばは、この夕食の終わりを告げるもので。


「お父さん。私、夢ノ咲学院に行きたいの。普通の学校には、行きたくない」


自分の声がこんなに冷たくなるなんて知らなかったな、と永遠はふと思った。
その日の夕食がどんな味だったかは、結局思い出せなかった。



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2015.06.12
「なんというか、秋紀が制服をちゃんと着てるのって変な感じよね」

そう言われて木葉は、少しやりすぎたなと、そう思ったのだ。
癒乃の物言いはいつでももっと直接的で、言葉を濁すようなことはしないから。


「俺、彼女いるから」と断っても食い下がってくるから、ちょっと面倒な子だなぁなんて思ってふと目を逸らしたら件の彼女がいたわけで。
気づいたときにあれが彼女だとでも紹介してしまえば良かったかとも思うが、それはそれでお叱りが来そうだ。
少しの意地悪心と、あわよくばやきもちでもと思ったのはわがままが過ぎただろうか。
自分のことで不機嫌になる彼女に悪い気はしないけれど、理由はなんにせよ暗い顔をさせたままではせっかくの帰り道が台無しだ。


「なあ、ちょっと手ぇ出して?」

木葉がそう言えば訝しげな顔をしながらも素直に手を出してくる。
そういうところがまた可愛いなと思ったり。

「ほれ、これ」

そう言って手渡すのは、何の変哲もない小さなボタン。
しかしそれが卒業生にとって重要な意味を持つことは、誰でも知っているだろう。当然、彼女も。

「もしかして……第二ボタン?」
「そー、俺の心臓よ?おまえのためにとっといたんだからちゃんと貰えよなー?」

我ながら恥ずかしいことを言っているなと思う。でも軽口でも言わなければ恥ずかしすぎてやっていられないのだから許してほしいものだ。

「…ふふっ」

癒乃が笑う。
それだけで不思議と安心させられる。
やっぱり女子は暗い顔より笑顔だろう。
それが彼女ならばなおさらだ。

「喜んでもらえたならなによりで」
「そうね、何か嫌なことがあったら思いっきり握り締めることにするわ」
「おおこわっ!こりゃあ機嫌を損ねられねーなぁ!」

木葉も笑う。
ひどく可愛げの欠けた言葉を慈しむ。


(願わくは、こんなやりとりが末永く続きますように!)

『憂鬱の先を』
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2014.10.14
二人目。

卒業式は告白の日じゃないんですよ、なんて。
二階の窓からその風景を眺めている私も大概趣味が悪いけれど、見せつけるようにしているのは彼女たちなのだからまあ許してほしい。


「モテるってか都合がいいだけだろ」

なんて彼は言うけれど。
彼に惹かれる人がどれだけいるのだろうと考えると少し陰鬱で。

(それに、大学は私服だし…人と遊ぶ機会もきっと増えるわ。そしたらきっと可愛い女の子と遊ぶことも……)


「おーい!帰んぞー!!」

考えごとをしている間に秘密の儀式は終了していたらしい。
上にいるのに気付いていて女の子に告白されるとはなんと性格の悪い、と思いながらも自分も同じようなことをしていたのだから責めることもできない。

(帰るぞ、と言われるのが私以外の誰かになったら)

私は正気でいられるだろうか。


となりを歩くことに慣れていく。
それが少しだけ怖くなった。


『卒業式の憂鬱』
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2014.10.14
なんというか文字通り無題な日々を送っています
バイトもあったりなかったり
お金はないので外にも出ず
淡々と時間だけを消費する日々です

死ぬのだろうか
2014.02.12
もう今年も終わりに近づいているわけですね。
クリスマスへのカウントダウンも始まっているわけですが仕事なので関係ないですね。




年賀状をお送りしたいと思っていますので何卒。

ハガキで、なおかつ手書きでお送りしてもいいよという方はTwitterのDMか

horoscope1103☆gmail.com (☆→@)こちらまでご連絡お願いします。

交換していただける方にはこちらの住所も送りつけお送りさせていただきます。

描いて欲しいものなどありましたらお気軽にリクエストもどうぞです(*´◒`)

ただ数は書けないので最大でも二人まででお願いします・・・(惰性

住所はちょっと・・・という方にはSkypeやTwitterのリプライでお年賀の画像をお送りしているので

もらってやってもいいよ!という方は一言いだたければ嬉しいです('-'*)




大体こんなこと言ってもなんの反応もないので本当にお気軽に・・・・お願いします・・・・・・・(´・ω・`)

2013.12.21